家の壁塗り
ある日の夜中の3時頃、2人組が酒を飲んでの帰り道、一人が「あ、そうだ、確かこの辺にらもさんの家があるはずだ、ちょっと寄って行こう」と言った。時間も時間である。もう一人が心配して「いくら何でも夜中の3時だし、今日は止めよう。」と言ったが、「らもさんの家だから全然大丈夫のハズだ」ということで家を探したら、すぐわかった。何しろ、他の家は当然真っ暗なのにその一戸建てのらも氏の家だけは煌々と電気がついている。
玄関の前に着いたら、ちょうどその時玄関の戸が開いて中から女の人が出てきた。らも氏の奥様である。
「あら、いらっしゃい」
と奥様が言う。その時の奥様の格好は、長靴を履き軍手をし、片手にバケツを持っていて、その中には何やら緑色の液体が入っている。
「何をしているんですか?」
と聞くと
「家の外壁にペンキを塗っているところなの」
とのことであった。緑色の液体はペンキであった。
中島らも氏は小説家・劇作家・放送作家等をされていました。とても多彩でユニークな方ですが、流石、らも氏の奥様、夜中の3時にペンキ塗りをし、そして色が緑とは、なかなかやるな、と言う感じです。
(酒を飲んで、訪問した2人のうち、どちらかか書かれた本だったような気がします。)